ゴンド・アートに出会ったのはインド西海岸のムンバイに住んでいた際、村の学校をまるまる使ったアートイベントにボランティアとして参加した時のことです。一つの教室に入った瞬間、あまりの迫力に固まってしまったのを覚えています。四方の壁いっぱいに、顔のある太陽、木、川、鳥、牛、そのほかの生きものたちが色鮮やかに伸びやかに描かれており、それぞれのモチーフの今にも動き出して語りかけてきそうな力強さと無邪気で可愛らしい表情にすっかり引き込まれました。それが、ゴンド・アートでした。

その後、画家が多く住んでいるボーパールを何度も訪れ、たくさんの画家と出会い話を聞いていく中で、ゴンド・アートの魅力にどんどん引き込まれ、気づいたら家中が色とりどりの絵で溢れていました。
一方、画家やその家族と親交を深めるうちに才能ある作家でも絵だけで食べていくのが中々難しいこと、作家への許諾のないまま作品が模造される、グッズに使用されるなど、著作権が守られていない現状も目の当たりにするようになりました。

ゴンド・アートの魅力を多くの人達に知ってもらいたい、そして、画家たちが自分達の名前で継続的に絵を描ける環境を作りたい。そうした願いを胸に2014年12月にTouch the GONDを立ち上げました。それ以来細々とではありますが、原画展やイベントを開催しています。

土着の神様や村の動植物をモチーフにした発想豊かでユニークな構図、それぞれのモチーフのなかに敷き詰められる連続したパターン模様。色彩の選び方や動物の描き方、パターン模様の組み合わせ方、ストーリーの組み立て方の独特さ。さらに、一枚の絵の中に共生する動物や木々や人からは、この世界の生きものが皆等しく自然の恵みのなかに生かされているということを改めて感じさせてくれます。

どこが魅力と映るかは人それぞれですが、Touch the GONDを通じてゴンド・アートを一人でも多くの方に楽しんでいただけたら幸いです。