先日、「彼方の木ーEvery Tree is divine, unique」展（神楽坂ロムマーイ）、無事会期終了となりました。

総じてお天気にも恵まれ、連日絶え間なくお客様がいらしてくださり心よりお礼申し上げます。
ありがとうございました。

ー「彼方の木」展　ご挨拶よりー

「すべての木は神で、唯一無二である」

今回の展示会のテーマは “木”。
2年前、ナルマダ川源流の聖地アマルカンタクの森に連れて行ってもらったとき、画家たちの木に関する知識の深さに驚かされました。これは神様が棲んでいる木、これは美味しい実がなる木、あれは黄疸の薬になる木、この木とあの木は夫婦で…など、それぞれの木を指さしながら教えてくれました。

伝統的な村の生活において、木は家や農具を作る素材としてだけではなく、燃料や飼料、食料品や医薬品としても使われてきました。例えば、腹痛や消化不良になったとき、狂犬病やヘビに噛まれたとき、さらには呼吸器系や心臓の病気を治すとき、薬効成分のある木が使われます。実や樹皮からとれる油は保湿剤にもなります。食べられる実もたくさんあります。また彼らの神具である大切な楽器バーナーもサージャという木をベースに作られています。

自然と密接に結びついた生活は木に関する豊富な知識を培うとともに、自然信仰を支え、後世に受け継がれる数多くの神話や民話を生んできました。画家たちの「木に神が宿る」という信仰の根っこにあるのは自らの体験や、親や祖父母から伝わる物語を通した木への愛着や興味や感謝の意思表示でもあります。
残念ながらインドの急激な都市化は村も例外ではなく、こうした知識や物語は伝承されにくくなっています。ゴンドの画家たちはこうした状況を懸念し、絵を通して民族の要である神々の話や様々な木の物語を次世代に残そうとしてきました。

今回の展示会はこうした画家たちの想いを受けて実現したものです。会場で流している画家のインタビューは2022年のインド大使館の展示会で放映したものですが、今回の展示用に少しだけ編集を加えました。

うねうねと曲がりくねった枝の輪郭、揺れている葉、凛とした幹のたたずまい、不思議な根っこ。枝やふもとに集まる動物たち。葉や枝がすれる音。
彼方インドからやってきた、個々にユニークな木の作品をどうぞゆっくりとお楽しみください。

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