What is GOND Art ? ゴンド・アートについて
ゴンド・アートは、インド中央部のマディヤ・プラデーシュ州近郊に住むパルダーン・ゴンドという先住民族が描く絵です。
パルダーン・ゴンドは、かつて、バーナーという弦楽器を弾き、歌うことを通して自然に中に宿る神々を降臨させることを生業としていました。また民族に伝わる神話や民話・習俗にも詳しく若い世代に文化を伝承する村の語り部でもありました。ゴンド・アートの原点は、こうした役割を担う彼らが日常的に家の壁や土間に作っていたレリーフや装飾にあります。
ゴンド・アートは、民族に伝わる神話や寓話、森に住む動植物を描いたモチーフと、それぞれのモチーフの中に敷き詰められる繊細なパターン模様が主な特徴です。人や動物たちが1枚の絵の中に共生する構図、ユニークな生きものたち、色彩のコンビネーションの多様さ、パターン模様の美しさなど魅力は数多く挙げられます。
民族画でありながらポップでモダンなテイストを持つゴンド・アートは、近年世界中の美術館で紹介されてきました。日本ではインドの出版社タラブックス社によるシルクスクリーン印刷の手作りの絵本「夜の木」や「世界のはじまり」などでゴンド・アートを知る方も増えてきているようです。
Jangarh Singh Shyam ジャンガル・シン・シャーム
1980年代、先住民族の芸術を調査していた一行がパルダーン・ゴンドの若者ジャンガル・シン・シャーム(1962~2001)が作ったレリーフを発見します。この一行を率いていたキュレーター J・スワミナサンはジャンガルの類稀なる芸術的な才能に驚き、彼に絵を学ぶことを勧めました。ジャンガルは村から都会に移り住み、渡された筆を使って画用紙やキャンバスに絵を描き始めます。ジャンガルの生み出す独創的な作品は評判を呼び、1989年にポンピドゥー・センターで行われた展示をきっかけに多くの美術愛好家等を魅了しました。
創作の一方で、ジャンガルは「ジャンガル・カラム」というアトリエ兼学校を作り、同じ民族の仲間に絵の描き方を教えました。これが今のゴンド・アートにつながりました。残念ながらジャンガルは39 歳の若さで亡くなりましたが、彼が生前指導した画家たちが今ゴンド・アートの世界で活躍しています。